概要
- 今回は8月21日から8月22日にかけて関東を直撃した、台風9号の被害で雨漏り修理の依頼を受けました。
8月21日から22日にかけては練馬区は最大瞬間風速が9.2m。強風は大したことはなかったのですが、大雨は22日月曜日の合計降水量が145.5㎜とかなり大雨が降りました。特に夜中の2時と朝の10時から12時にかけて、練馬は大雨が降りました。21日の午前中から昼ごろには、雨はおおむね、上がり気味でした。
余談ですが、その日は確か山の手線が止まって、夕方の会合に大幅に遅れました。 - 8月24日の昼過ぎに、お電話で雨漏りの修理の依頼を受けまして、たまたま近くにいたので現場調査に伺いました。今回は、練馬区大泉学園町7丁目付近です。
- 8月29日室内、養生
- 本工事9月25日
- 陸上自衛隊朝霞駐屯地に近く、関越道、大泉インターからも近く、東には都立大泉公園があり、西側にも高校、小学校があり、とても閑静な住宅地です。お客様が依頼された経緯は、息子さんが当社のホームページをご覧になって、お問合せ頂いてみたいで、まず、お客様が心配されたのは、西側の二階の八畳間の和室の雨漏りを気にされてるようでしたので、屋根の上に登って現場調査を行いました。予想どおり、ケラバの瓦がずれたり、棟の部分ののし瓦がずれたり、漆喰が欠けてたりと、かなり傷んでるようでした。鬼瓦も外れかかってました。今回は条件が限定されてるので、本当でしたら屋根瓦の全面葺き替えをお勧めしたのですが、今回は雨漏りを止めて、屋根の最低限の修復にとどめることになりました。ちなみに、今回は台風9号での被害ですので、火災保険適用できる事象です。保険会社にもよりますが、現状復旧に対する費用(外部足場費用)は出る可能性がありますが、共済系は性質上、お見舞金ですので、請求額が満額出ることはないです。
- 今回のお客様も、私ども職人に対して、10時と15時にお茶やお菓子を出してくださって、大変よくしてくださいました。工事の完工後も大変満足して頂き、喜んで頂きました。
屋根の基本箇所の名称
- 屋根の基本的の名称は、業種・地方によって呼び方が異なります。
上から、棟の①『冠瓦』といいます。①『冠瓦』は基本的には漆喰や水シュットで固定・接着しています。
②『のし瓦』も下から積み上げて泥や水シュットで接着や設置していきます。
③『漆喰』は丁寧金コテで仕上げていきます。
④『平瓦』は瓦の上を釘で丁寧に固定していきます。
雨漏りの状況
- 西側の和室の天井から雨漏りがするようです。今回、始めて雨漏りしたようで、ボタボタとかなり激しく漏れたらしく、お客様もかなりびっくりされてるようでした。部屋内の家財道具に雨水がかからないように、念の為に室内養生を行うことになりました。
- 和室の天井を全体的に養生シートで覆ったので、お客様も大変安心されて、喜んで下さいました。
屋根被害状況
- 鬼瓦が台風の影響で外れかかってます。おそらく、長年、風・雨で劣化しかかっていて、今回の台風9号の風で外れたと思われます。
- 棟瓦の部分も相当ずれてます。特にひどいのが『のし瓦』で、かなりズレているようです。おそらく、地震、大風、の影響も多少あるようです。
- 棟違いになっていますが、全体的に棟がかなりズレているようです。
- ケラバの瓦もかなりズレてます。下地の木部もみえるほどですから、かなりのものです。
- ケラバを上からみたところです。瓦がかなりずれています。
- 軒樋は雨水は滞留してるので、おそらく2014年の大雪の影響で、変形して逆勾配になってると思われます。
施工前と施工後
使用材料
- 創嘉瓦工業株式会社製の『三州純いぶし瓦』です。特徴として、耐久性能は純いぶし瓦は耐水性、耐火性、耐寒性、耐震性に優れています。夏は暑く、冬は冷え込む、四季の移り変わりの激しさ日本の風土のおいて、住居空間を常に快適な状態に保つ、まさに、最適な、屋根材と言えます。
- 高い品質、純いぶし瓦は約1100℃以上の高温で均一に焼き締められ、高い耐久性を誇ります。その独特の色は、焼成後に空気を完全に遮断して『蒸し焼き』にする『燻化』とう工程において生まれる美しい色調です。
- 純いぶし瓦は環境にもやさしく、素晴らしい、自然素材である良質な粘土から造られる天然素材で、100年以上の役目を終えるとまた、土に還るという非常に環境にいい屋根材です。
- 新規南蛮漆喰(水シャット)㈲深谷配合粘土工業製の水シャット(黒)を使用しました。水シャットはモルタル並みの強度を保つ、屋根用南蛮漆喰シリコンを含む製品である為、水をはじく防水性(撥水性)に優れ積雪地方まで対応、コテ離れがよく、施工しやすいです。地震や風雨に強く収縮率が低くひび割れしにくい、棟瓦との密着性がよいです。東京もさすがに冬場は気温がマイナスになることはまずないですが、寒暖差がかなり激しいですし、梅雨から秋にかけて集中豪雨が増えてるような気がするので、水シャットは最適な建材です。しかも、台風などが多くなっているので水シャットみたいな南蛮漆喰はかなり適応性が高いと思われます。
- 東レACE株式会社製のエア・ドライ(透湿防水シート)を使用しました。基本的には、外壁材の内側に使用する、縦胴縁と断熱材の間に使用するものですが、優れた通気性と透湿性があり、壁内の結露を防ぎ、優れた防水性が雨や冷気の侵入を遮断する防水シートです。非常に軽い素材でありながら高い強度を誇り、施工が簡単です。特性に目を付け、屋根材『三州純いぶし瓦』と瓦桟木の間に使用することにしました。
既存棟瓦撤去状況
- 既存の棟瓦を丁寧に手作業で撤去していきます。今回は『のし瓦』と『鬼瓦』は再利用しますので、できるだけ割らないように、丁寧に移設していきます。
- この日は大雨が何日か続いて日の翌日でしたので、瓦の接着にしようされてる、漆喰などは雨水の濡れて、ドロドロになってました。大雨のすごさを感じました。
既設屋根材(瓦)撤去完了
- 既存瓦を撤去してから、ハイトン(既存防水材)を丁寧に清掃して瓦桟木も表面にだします。
- ちなみに、瓦が雨漏りする一つの要因は、瓦桟木が横に設置してあるので、雨水が既存の瓦に浸水して水が瓦桟木の溝に滞留しやすくなり、雨漏りする原因になると考えます。昔は瓦桟木に水が滞留しないように、縦方向に桟木を設置して、横桟木は縦方向桟木の上に設置したそうです。
新規透湿防水シート設置
- 新規透湿防水シート設置状況です。棟瓦から覆うように新規透湿シートを設置していきます。既存の瓦を重しにして、下の瓦丁寧に設置していきます。もちろん、既存の瓦で古くて、破損しかかってる瓦は取替用にもってきた『三州純いぶし瓦』と差し替えてきます。
新規ケラバ部分瓦設置状況
- 新規ケラバも針金で固定していきます。瓦の上部はビスで丁寧に固定していきます。このとき、気をつけないといけないのは、瓦の安定感をだすため、瓦のかけらを隙間に入れて安定させないといけません。
新規のし瓦設置状況
- 新規のし瓦の設置状況です。この場面では、水シャットがかなり活躍します。のし瓦を丁寧に一枚ずつ、設置していきます。もちろん、経年劣化して古いものは取替用に持ってきた、のし瓦と差し替えていきます。
棟瓦仕上げ状況
- 冠瓦や鬼瓦に水シャットを丁寧に塗り込んでいきます。このとき、棟瓦の箇所、部位によって、コテの種類を変えていきます。
東側屋根
- 西側と同様、既存の瓦を出来るだけ割らないように移設して、再利用できるように、丁寧に作業します。瓦桟木の部分を丁寧に清掃して、新規透湿防水シートを破らないように、丁寧に細心の注意を払って設置していきます。
既存瓦復旧完了
- 既存瓦を本復旧していきます。既存の平瓦が経年劣化したり、割れたりしてる平瓦は新しい、三州純いぶし瓦に交換していきます。
のし瓦の水シャット設置
- 『のし瓦』を設置していくに当たって、水シャットを丁寧に敷設していきます。既存の「のし瓦」も経年劣化で割れたり、傷んだりしているものは、新しい「のし瓦」と取り替えていきます。
棟復旧状況~完了
- 今回の工事で苦労した点で、工事手順としては、二段階に分けておこないました。第一段階として、雨漏りを早急に止めないといけなかったので、棟の上から、既存の瓦を三段から四段、一時的に移設または撤去しまして、それから、瓦桟木の部分を清掃して、ハイトン防水材もきちんと清掃します。新規透湿防水シートを設置していきます。ケラバの瓦を設置していきました。既存平瓦を設置していき、丁寧にビスで固定・設置しました。棟瓦の一番下にあたる「のし瓦」を接着するのに、水シャットを設置していきます。そして棟を仕上げていきます。
- 棟を仕上げるときは、バンセンを丁寧に組んでいかないと、後々、劣化の原因になりかねないので、丁寧に組んでいきます。
- 余談ですが、お客様に、「屋根の補修ですので、外部足場なしで、できないですか」と?質問されることがありますが、基本的に外部足場を組む意味として、住宅地など、隣接してるお宅に誤って工具や材料が落下、飛散したりしないようにという近隣への配慮。それと、作業スペースの確保が目的です。屋根の端部、特にケラバの部分など、作業を行う場合など、足場の道板に足を乗せないと、かなり作業がしずらいです。それと、屋根の上の限られた空間に材料を置いたり、仮置きしたりするので、外部足場で囲わないと危険です。それと、なんといっても作業員、職人さんの転落防止が大きな目的です。 ただ、一般的にできるだけ工事費用を安く押えたいですから、できれば、かけなくてもいいものはかけたくないですから、なかなか、難しいところではありますが、でも、お客様が素朴に疑問を持たれる気持ちもわかります。お客様は屋根の修理をしたり、塗装するのは10年に一回するかしないかですから。ただ、私共、工務店は年中足場を組んでるわけですから、私共が当たり前だと思ってたことに、お客様が疑問をもったりするわけですから、相手側(お客様)の疑問・質問を解いてあげるよう、努力しないといけないと思います。