現場の状況
- 今回は東京都目黒区緑が丘一丁目付近の古びた、風情のある商店街の一角のお宅でした。施主様も地元で商店会の役員、地域の自治会の役員をされたり、とても、ボランティア精神あふれる、ご主人様で、奥様が熊本出身ということで、私も熊本出身なので、意気投合しまして、とても打ち合わせしやすかったです。スナックを経営されてて地元では有名みたいで、往年の有名な歌手、芸能人の方のポスターが店内に貼ってありました。
- 建物は築20年~25年前後みたいで、ALC、へーベルみたいです。屋上は防水になってます。10年前くらいに、地元の塗装業者さんで全面改修をやられたらしいですが、正直、屋上防水の時期に来ており、外壁も雨漏りしてるぐらいですから、メンテナンスの時期です。
- 点検の時に気を付けたのはセメント瓦ですから、足の踏み場を間違えればすぐに割れてしますので、重心のかけ方と足の置き場の細心の注意を払いました。それと、軒先は危険なので、出来るだけ歩かないように注意しながら点検作業も行いました。幸い、施主様がおっしゃるには、まだ大きな雨漏りはしてないらしく、屋根の頭頂部の棟瓦が一番気になるようなので、棟瓦の浮き具合と漆喰の剥離具合を確認しようと思います。それと、セメント瓦の損傷具合を十分、確認したいのと、北側の軒樋の損傷具合です。
- 通常の雨では雨漏りしないらしいのですが、大雨で吹き降りの時は二階の天井から雨漏りがするらしく、天井裏にバケツならぬ、箱型の深い容器を設置をされてるみたいです。ご主人様も大変、精神的に参ったようで、住んでる方はストレスが溜まってるんだなと感じました。
- 雨漏りの原因は、おそらく三階屋根の道路斜線制限部分の斜めになってる屋根が、ラス網を設置してモルタルを塗ってある上に直接タイルを張ってる為、新築時から時間が経過すると防水性がなくなり、大雨で吹き降りの時、表面のタイルから雨水がモルタルに浸入して、3階の外壁を伝わって、2階の天井に水が溜まると思われます。
余談ですが、東側の軒樋が2014年2月14日の大雪で変形・破損してるみたいです。こういった場合は、火災保険に加入していれば、損害認定されたら、軒樋の修理費用が支払われる可能性があります。今回も雨漏りの修理と同時に2014年2月14日の大雪での雨樋の破損も申請することになりました。結果的に火災保険で少し捻出できたのでよかったです。ちなみに直接、雨漏りでは火災保険の適用にはなりません。風災、雪、破裂、爆発、雹、など、自然災害で屋根やトタン、棟が、飛んだりした時に雨漏りした場合などは火災保険で認定されます。 - 今はネットやホームページで情報があふれてますので、私たち業者よりも、材料のことに関して大変詳しいお客様も中にはいらっしゃいまして、ネットで調べられたのだと思いますが塗料や建材の件でよく存知じだなと思うことがよくあります。ただ、なんとなくですが、私たち業者は材料を使用するにしても、現場の状況、天候により、柔軟に対応しないといけないのでなかなか、難しいところはあります。
施工前
- 道路斜線制限部分の屋根の状況です。おそらくラス網を設置して、モルタルを塗り、直接、タイルが貼ってあるので、年数が経過すると雨水が外壁を伝わって雨漏りしてる可能性があります。
- 新築時にタイルを貼る前に、カチオンで仕上げてタイルを貼れば、大分違った可能性があります。むしろ、カチオンを塗布したら、今回のような雨漏りは起こりづらいような気がします。中には工務店によって、ラス網→モルタル→タイルを直接貼る業者があると聞きます。
カチオンについて
- ヤブ原産業株式会社 セメント系カチオン性SBR樹脂モルタルカチオンタイトFです。①建築から土木にいたるまで広範囲な種類の下地に対して高い接着力です。②曲げ強度、耐摩耗性、防水性、防錆性に優れてます。③爆裂・欠損補修、コンクリートの中性化抑制に優れてます。④セット化されてるため、調合ミスがおこりにくいです。(実際は粘度を変えるために、現場によって調合を変えることもあります) 主剤15.5キロ、硬化剤4.5キロで、練上がり量、11.7キロになります。
- 現場の条件、天候、気温、下地の状況で多少は配合比率を変えるそうです。ドロドロのときもあれば、しゃぶしゃぶのときもあるみたいです。塗布する道具は刷毛を使用したり、コテを使用したり、現場で使い分けます。
既存タイルの撤去
- 新規水切り(雨押え)を設置前の、タイル一枚分を撤去して、カッター(サンダー)を入れます。 タイルを撤去しないと勾配が取れないので、新規水切り(雨押え)を設置しても、縁切りできてないので、モルタルを通して雨漏りします。
- 既存タイルを撤去する時には、作業時に仮設の足場などを組んで飛散養生をしますが、念の為、ガードマンを配置して、歩行者の方、通行車両に配慮して作業をおこないます。
- 既存のモルタル壁もよーく見ると、かなり、しめってますので、やはり、かなり雨水を含んでると考えられます。
ガードマン配置
- ガードマン配置状況です。片側交互通行で誘導します。生活道路と商店街で交通量も多いので、気を付けて交通誘導します。それと、黄色い円で囲った箇所が作業箇所ですから、既存タイルを撤去する時に、作業をおこなってる職人さんが手作業で丁寧にタガネで既存タイルを撤去してるので、どうしても、タイルの破片が下に落下する可能性があるため、車、歩行者、自転車が通る場合に上の職人さんに声をかけながら、作業をおこないます。
新規水切り(雨押え)設置状況
新規水切り(雨押え)設置完了
新規雨樋設置完了
- 既存の①タイルを一枚分(幅五センチ)撤去して→②新規水切り(雨押え)を設置して、シール打設して化粧カバーを設置していきます。
- 新規半月の樋吊り金具を設置していきます。新規半月軒樋を設置していきます。
- これで、階屋根の道路斜線制限部分の斜めから雨水が侵入しても、新規水切り(雨押え)で縁切りして、軒樋で受けるので、雨水が外壁を伝わって雨漏りする心配もないと思われます。
- 今回、苦労した点は、板金加工です。どうしても、現場の屋根の形状に合わせて加工しないといけないので、かなりやりがいがありました。ビスで留めたところも、雨水が入らいなように丁寧にシールしました。半月軒樋の樋吊り金具も45,5センチピッチに下穴をもんで、丁寧に取り付けていきました。
新規シール打設
- 既存の窓枠の横の外壁も、ラス網を設置して、モルタルを塗って、仕上げて、タイルを直接貼っているので、ベランダ防水の境界と外壁とのつなぎ目のシールは撤去、新規打ち替えを行いました。もし、窓枠の下と外壁のつなぎ目のシールを撤去、新規打ち替えを行わなかったら、せっかく三階屋根の道路斜線制限部分の斜めの箇所にタイル撤去→カッター→新規水切り(雨押え)→新規軒樋を設置して、道路斜線制限部分の斜めの雨水を受けても、外壁は雨漏りしやすいというか、外壁からベランダ、サッシ下、外壁とのつなぎ目のシールがかなり劣化してるので、打ち替えないと雨漏りをしかねないので・・・
新規シール打設完了
- 新規シール打設完了です。これで、外壁から伝わる雨水はある程度、シャットアウトできますが、本当はベランダの防水も10年前に塗装屋さんが、ウレタンを塗布しただけですので、表面を確認した感じではかなり劣化しているので、高圧洗浄、防水工事を行ったほうが良いのですが。
- 余談ですがたまに、お客様からお電話でコロニアル(スレート)で屋根が破損して、雨漏りしてるが、上からコーキングで埋めて雨漏りは止まりますか?など、問い合わせもありますが、なかなか、雨漏りは天気、状況により、変わりますので、現場をみてみないと、わからないものです。
完了
- 雨漏りは正直、一回で止まることは中々無いのですが、まず、そこに住んでいらっしゃるお客様にどんな事象で雨漏りが起こるか?例えば通常の雨でも慢性的に雨漏りするか?大雨で風の強い日に雨漏りするか、風向き、雨の強弱と、雨漏りにはいろいろな要素があります。工事した後、何日か経過して大雨が何日か続いた日に、お客様に電話したら、あれだけ、大雨の翌日には二階の天井の室内の雨受けの箱に雨水が溜まっていたのが、ここ何日かの大雨の後には雨受けの箱には雨水が溜まってないと聞いて安心しました。
- ただ、油断・安心できないのが、道路斜線制限部分の斜めタイル部分で、モルタルの上に直接タイルを貼ってあるので、根本的には解消されてないため、やはり、今回のは暫定処置といえば暫定処置にはなります。ですから、根本的に解決するには道路斜線制限部分の斜の部分を全部、板金加工してきちんと納めることが望ましいです。今年みたいに、台風が一気に3個もきたり、雨の降り方も集中して降ったりした場合は特に、雨漏りの原因はかなり分かりづらいです。今回は本当にたまたま、一回で雨漏りが止まったから良かったですが、やはり、多い現場で3回以上現場に赴く事例もあります。本当に、現場は生きてるし、私自身もかなり勉強になります。今はさほど感じませんが、当初は雨漏りの調査依頼を受けた時はやはり、ネガティブでした。しかし今は、かなり勉強になると思うようになりました。雨漏りが止まったら、施主様は喜ばれるし大変いいことです。
- 前回のメンテナンスを行なってすでに10年以上が経過しています。外壁もALCですので、版間目地のつなぎ目のシールもかなり劣化してるので、やはり、きちんと外部足場を組んで、増し打ちができるなら、既存シールを撤去して、新規シール打設して、ALCの塗装をおこなったほうが、もちろん、既存タイル部分も既存タイルに塗布してある塗料を丁寧にケレン・剥離して、撥水剤などでメンテナンスした方がいいと思われます。